バックナンバー

“微笑みの国”タイの礎となった2つの王都 スコータイ、アユタヤで知るタイの歴史

 小野 正惠
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 はてな
インドシナ半島の中央部に位置し、"微笑みの国"と呼ばれるタイ。この国には2016年1月現在5つの世界遺産があるが、そのうち2つは、タイの歴史を物語る重要な遺跡だ。スコータイとアユタヤ。いずれも廃墟となって久しいが、空高く伸びる仏塔や、柔和な表情の仏像群が居並ぶ空間には、熱烈に仏教を信仰した人々の思いが漂っている。

"幸福"と名付けられたタイ初の独立王朝

王国であるタイには、現在のラタナコーシン朝(チャクリー王朝)の前に、スコータイ朝とアユタヤ朝の2大王朝が栄えた。このうち、1238年頃にタイ初の独立王朝として興ったのがスコータイ朝だ。スコータイとは「幸福の夜明け」という意味である。

スコータイはバンコクの北約450kmに位置し、現在はかつての都城の一部が歴史公園になっている。東西約18km、南北約1.6kmにわたる城壁の内外に、37の寺院を含む約200の遺跡があり、まるで広大な野外博物館のようだ。

座るもの、直立するものなど随所で巨大な仏像が見られる。むき出しゆえ、光の当たり具合で仏像の表情は変わる

城壁内のほぼ中央にあるのが、王室寺院のワット・マハータート。スコータイで最大かつ最も壮麗で、210m四方の境内に18の礼拝堂、5つの聖池があり、仏塔の数は185基に及ぶ。中心の中央塔には仏陀の聖遺物が安置されていたといわれ、おそらく王朝にとっては重要な聖域だったに違いない。

ワット・マハータート。ここでは毎年11月の満月の夜、水の霊に感謝を捧げるロイ・クラトンの祭が行われる

一方で、民衆に篤く慕われたのがワット・シー・チュム。ここには高さ14.7mとスコータイ最大の仏坐像が鎮座し、「動かぬもの、変わらぬもの」を意味するアチャナ仏と呼ばれている。仰ぎ見る人と視線が合うように作られたこの仏像は、後頭部に小部屋があり、かつてその部屋から王が民衆に語りかけたという。人々にとっては仏の言葉に聞こえたことだろう。

ワット・シー・チュムの仏坐像は、膝の上に置いた右手の指1本が大人の身長ほどの大きさ

どこの寺院でも仏堂は屋根が失われ、石柱のみが林立し、多くの仏像がむき出しになっている。長い間吹きさらしになっていたため、仏像には汚れが目立つが、限りなく穏やかな表情には癒される。スコータイの仏像は、たまご型の顔に特徴的な眉が描かれ、体のラインは滑らか。これは、仏陀の顔をリアルに再現するより、いかに理想化するかが重要だったためといわれる。

> "歩く仏"のなまめかしい曲線美
1  2  3  4

JAGZY OWNERS

↑このページのトップへ