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モロッコで見る、つわものどもの夢の跡 メクネスとヴォルビリスで、“男の夢”に敬意を表す

 小野 正惠
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日の没する魅惑の王国、モロッコへの旅。2回目の目的地は、メクネスとヴォルビリスにある2つの世界遺産。カサブランカを出発して北上すること約240km。道半ばには、首都で世界遺産にも登録されたラバトがあり、その先に現れるのが17世紀に都が置かれたメクネスだ。さらにフェスを目指して北東へ向かうと、古代ローマ帝国の遺跡、ヴォルビリスにたどり着く。果たして、この2つの町で、心打たれるものとは?

ルイ14世を目指したスルタンの夢の跡

モロッコへは、日本からの直行便がないため、ヨーロッパか中東を経由する。いずれもカサブランカや首都ラバトに入り、そこからの移動になる。時間がたっぷりある旅なら、鉄道を乗り継ぐのも手だが、JAGZY世代にはそれほどの余裕はないだろう。そこでツアーに参加するか、個人的に車とガイドを手配してしまうのが手っ取り早い。

雨季と砂嵐、酷暑を避けて3月に行ったモロッコでは、カサブランカからチャーターした車とガイドの案内で、メクネスとヴォルビリスにある2つの世界遺産を目指した。

この2つの町の共通点は、"男の夢"だ。メクネスはフェス誕生よりずっと後の17世紀、現王朝でもあるアラウィー朝第2代スルタンが都にしたことで栄えた町。王都としての役割はたった50年、1代限りで終わったが、スルタンはこの地にあくなき夢を追い求めた。「自分はフランスの国王ルイ14世のようになりたい」と。

メクネスの旧市街は頑強な城壁で囲まれている。のどかな雰囲気が特徴の町

フランスびいきだった、スルタンのムーレイ・イスマイールは、ブルボン王朝の最盛期に君臨した"太陽王"ルイ14世にならい、彼のもつベルサイユ宮殿のような王宮を建て、絶対王の都にふさわしい町にしたいと願ったのだ。王宮だけでなく、市民のためのインフラの整備や穀物倉庫の建設にも励んだ。

17~18世紀に建造された穀物倉庫。このほか、穀物貯蔵庫や兵舎、うまやなども残る

モロッコが農業大国であることから分かるように、王宮に隣接して造られた穀物倉庫は広大で、市民の食糧はもちろん、スルタン所有の馬1万2000頭分の餌まで蓄えることができた。現在、王宮には入ることはできないが、敷地に沿って続く「風の道」を歩くと、ベルサイユ宮殿にならおうとした王宮の規模が体感できる。

強風が吹き抜ける風の道。この右手に王宮庭園と王宮が続き、その奥に穀物倉庫と貯水池がある

500m近い一直線の道は、まさに風の通る道。その道を抜けたところには、スルタンをしのんで建てられたムーレイ・イスマイール廟がある。しっくいの壁からアトラス杉の天井まで、緻密なモザイク彫刻で装飾された美しい霊廟である。夢の実現を見ずして散ったスルタンをしのび、後継者たちが建立した。男が、男の夢に敬意を表し建てた霊廟。それがこの美しい建物なのだ。

こうした思いは、世界共通の男の美学なのだろうか。メクネスは、そんなかの地の男意気を感じられる町なのである。

モザイクが美しいムーレイ・イスマイール廟の沐浴(もくよく)室

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