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知恵と工夫が詰め込まれた合掌造り家屋 里山の原風景が残る白川郷・五箇山

 小野 正惠
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岐阜県白川村と、富山県五箇山(ごかやま)。日本有数の豪雪地帯として知られる両地域には、「合掌造り」と呼ばれる巨大な家屋が数多く見られる。両手を合わせたような形からその名がついたともいわれる合掌造り家屋には、暮らしの知恵と工夫がぎっしり詰まっている。これらの家屋が軒を並べる集落は、現在の日本では失われつつある農村の原風景として、世界の至宝と認められた。[冒頭写真:岐阜県白川村役場]

偉大な建築家も大絶賛の合掌造り家屋

「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として世界遺産に登録されているのは、岐阜県白川村の荻町集落と、富山県南砺市の菅沼集落、相倉(あいのくら)集落の3つ。合掌造りは、現在の日本では白川郷と五箇山地域に特徴的に見られる家屋だ。

合掌造り家屋は一般の日本家屋に比べて床面積が広く、建物自体も大規模だ。白川郷、五箇山の両地域は平地が少ないために稲作には不向きで、屋内での養蚕製糸や煙硝作りなどの家内制手工業が盛んだった。また、両地域は明治時代末期まで、家長と、次世代の家長夫婦を中心に、親族と使用人の数十人が一緒に暮らす大家族制が主流だった。こうした理由で、巨大な建物が必要だったのである。

合掌造りは、屋根裏を作業場として積極的に利用したところが、一般家屋とは大きく異なる[写真:岐阜県白川村役場]

合掌造り家屋のもう1つの大きな特徴が、自然との共存を考えた構造になっている点。この地域は、多い時で積雪が2メートルにも達する。建物の屋根が急勾配なのも、雪下ろしの負担を減らし、さらに水はけをよくする役目を担っている。

白川郷や五箇山の冬は長い。現在は道路の開通などで交通の便も良くなったが、一昔前は雪に閉ざされ陸の孤島となった[写真:photolibrary]

木材を結束するのはマンサクや荒縄の樹皮で、屋内を満たす囲炉裏の煤はこれらの木材や荒縄を燻(いぶ)して丈夫にするとともに、防虫効果を高める。さらに、屋根の主材料である茅は、役目を終えると田畑の肥料になるというリサイクル効果も備えるのだ。

囲炉裏のある部屋は「オエ」と呼ばれる。囲炉裏の煙や煤は各階に配されたスノコを通り、家屋全体に行き渡る[写真:岐阜県白川村役場]

合掌造り家屋を「建築上、非常に合理的な構造だ」と絶賛したのは、ドイツの高名な建築家のブルーノ・タウト。この評価により、この独特の家屋は世界中の人々から注目を集めることになったのである。

> 集落のあり方は異なれど
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