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大天使が舞い降りた、モン・サン・ミシェル 「海上のピラミッド」と呼ばれる海の修道院

 小野 正惠
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2015年4月現在、39もの世界遺産を擁するフランスで、最も人気があるとともに最も美しい修道院といわれるのが、モン・サン・ミシェルだ。島の名でもあり、修道院の名でもあるモン・サン・ミシェルの名声は、周囲わずか900mという島の小ささとは裏腹に、極めて大きい。大天使ミカエルゆかりの地であるこの場所は、欧州中から巡礼者が集まるキリスト教の聖地である。

すべては大天使のお告げから始まった

パリから車で約4時間。豊かな田園風景の中で、羊がのんびりと草をはむフランス北西部のノルマンディー地方。車でこの地に差し掛かると、草原の彼方にそびえるモン・サン・ミシェルの姿が目に飛び込んでくる。そのたたずまいはまさに、「何もないところにぽっかりとある」という風情だ。

車窓から望めるのは、いかにも欧州の田園といったのどかな風景。羊たちの向こうにモン・サン・ミシェルがそびえる [写真提供:Jean-luc Lebrun]

モン・サン・ミシェルは修道院というものの、近づいてみると、要塞とも城塞とも思えるような異様な姿が印象的だ。中央にひときわ高くそびえる尖塔も、まるで堅牢なよろいをまとっているかのよう。その足元には、巨人が無作為に投げつけたかのごとく、建物がゴテゴテと"くっついて"いる。

修道院附属聖堂の尖塔が、天に向かってそそり立つ。聖堂の外壁を補助するための「控え壁」にも尖塔状の装飾が施され、尖塔が林立しているような印象を醸す

この修道院を「大自然が生んだ芸術作品」と呼んだのは、フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーだ。けれども、「聖ミカエルの山」の意味を持つモン・サン・ミシェルの建設については、次のような伝説がある。708年10月のある夜、近郊の町アヴランシュの司教だったオベールの夢枕に、大天使ミカエルが現れたというのである。ミカエルは言う。「かの山に聖堂を建てよ」。

しかし、単なる夢だと思ったオベールは、そのお告げを無視すること2度。業を煮やしたのか、3度目に現れたミカエルは、オベールの頭を"こづいた"のである。その感触で大天使の存在を信じたオベールは、お告げに従い小聖堂を建設。すると、それまで陸続きだったこの山が瞬時にして、海の中の小島になったという。

モン・サン・ミシェル内には、ミカエルのお告げをモチーフにした彫刻が掲げられている

ミカエルに触れられたオベールは、自分の頭に穴が開いていることに気付いてがくぜんとしたというが、そんなバカな......と言うなかれ。実際に、アヴランシュのサン・ジェルべ教会に安置されたオベールの頭蓋骨の額には、大きな穴が開いているのだ。この"ミカエルの奇跡"が、モン・サン・ミシェルのルーツである。

これがオベールの頭蓋骨。額の穴は、医学的に説明できないといわれている。伝説の真偽やいかに...... [写真提供:Tango7174]

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