part 2.Location
自然を取りこむ美しい暮らし

2-1 設計図を手に土地を探す

ル・コルビュジエは「小さな家」の設計図を早々に完成させ、建築家としてヨーロッパ各地を歩きながら、そのプランにふさわしい土地を探し歩いたという。「湖から建物まで、わずか4メートル。まるでレマン湖に浮かんでいるようにみえるほど、水辺ぎりぎりに建てられた横長の平屋です。水平方向に帯のように並べた水平連窓からは、美しい湖面とその向こうに広がるアルプスの情景が一望できます」(淵上さん)。ゲストルームから出入りする小さな庭は、大木と石壁が心地いい日陰をつくっている。その石壁に設けた小窓から、まるで絵画のように湖からアルプスの眺めが切り取られているのも、心にくい演出だろう。

その庭で、午後のお茶を楽しむのが日課だったというル・コルビュジエの母。一日の間にも、刻一刻と移ろう湖の表情。木々の緑。夏から冬へ、ダイナミックに姿を変えるアルプスの峰々─「自然の移り変わりに触れる日常は、日々の大きな喜びであり、精神的にもいい刺激になる。閉塞的なスイスの寒村に暮らしていた彼女が、長生きしたもう一つの理由は、息子が母のために選び抜いた“ロケーション”のおかげかもしれません」と淵上さんは語る。

2-2 マイナスをプラスに考える眺望

「眺望の素晴らしいロケーションを選ぶことで、住まいの満足度は格段にアップします。ある意味、窓から見える景色が広々としていれば、暮らしのスペースをダウンサイジングしても空間的なゆとりは味わえる。これもミニマムで美しい住まいを手に入れるための重要なヒントでしょう」と、景観デザイナーとしても活躍する、とよださんは説く。自身が設計した軽井沢の自邸も、建築面積は28坪とコンパクトだが、崖地を利用した建物からの眺望は目の前に何も遮るものがない絶景。その景色の中へ突き出るように設けたテラス、壁一面フルオープンにできるダイニングの窓など、景色を室内に取りこむ工夫が随所にある。

崖地や間口が狭いといった「不動産としてはマイナス・ポイントの土地であっても、建物を工夫して設計すれば、すばらしいチャームポイントになることがあります」(とよださん)。たとえば50代の夫婦のクライアントが「川のそばで暮らしたい」という希望を持って探してきた土地は、南側は斜面がせまるロケーション。「普通なら『見通しがよくない』と敬遠されがちですが、見方を変えれば、窓からの景色はすべて斜面の緑! リビング・ダイニングに幅8メートルの大型の窓を設け、反対側のキッチンの壁にも鏡を貼って外の景色が映り込むようにしました」(とよださん)。明るすぎず、しっとりと落ちついた自然光の射し込む室内は、まるで森の中にいるような心地よさだと、クライアント夫妻からも喜ばれたという。

2-3 窓は景色を切り取る“額縁”

「都会に暮らしていても、住まいの中で自然を感じる工夫はいろいろと考えられますよね」と甘露寺さん。たとえば敷地の周囲に、あまり目にしたくないものがあるのならば、その方向を避けて窓を設計する。「窓というのは、風景を切り取る額縁のようなもの。その向こうに、きれいな枝ぶりの樹木を1本植えるだけでも、毎日の暮らしが美しく彩られるでしょう」(甘露寺さん)。“ここからの眺めが自分にとって最高のごちそう”と思えるような窓を持つことも、住まいづくりのコンセプトに生かせるのではないだろうか。

Aha! 将来の移住を考えてコンパクトハウスを持つ
建築家としてとよださんが現在すすめているのが、「プレ・リタイア世代のための『コンパクトハウス』プロジェクト(仮)」。子育てや仕事が一段落した50~60代に向けて、家事の手間がかからず、本当に必要な物だけに囲まれた、シンプルで心地いい住まいの提案だ。別荘や週末住宅として建て、リタイア後に移住するライフスタイルとしても注目を集めそうだ。
part 3.好きな物だけに囲まれた暮らし
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