日経ビジネス定期購読者のためのライフスタイル誌Priv.よりスペシャルコンテンツをお届けします。
(日経ビジネス Priv.プライヴ 2015年 春号より転載)

丁寧に、じっくり、時間をかけて…
特別なコーヒー時間を自宅で

スペシャルティコーヒーをテーマにした自家焙煎のコーヒーショップが増え、サードウエーブと呼ばれるショップが続々とアメリカから上陸。コーヒーをめぐる状況が加速度的に変化し、コーヒーを語るための言葉が次々と増えている。そもそもコーヒーは、嗜好品ゆえに凝り始めたらきりがないほど奥が深いもの。さらに今、コーヒーの楽しみ方が多様化し、しかもそれぞれが先鋭化しているのだ。複雑でわかりにくい? 確かにその通り。しかし同時に、選択肢が増えたことで、これまでには考えられなかったような極上の一杯に出合い、自宅で気軽に楽しむことができるチャンスが広がったともいえる。トレンドに流されるのではなく上手に取り入れ、自分好みの一杯にたどり着く。そのためにはどこで何を買い、どうすればよいのか。コーヒーの魅力を知り尽くした3人のスペシャリストに話を聞いた。

ご協力いただいた方

ライター・喫茶写真家 川口葉子 さん

『 東京の珈琲店 琥珀色のしずく77滴』(実業之日本社)など著書多数。各媒体で特集の監修や執筆を行う。Webサイト「東京カフェマニア」主宰。
http://homepage3.nifty.com/cafemania/

グラウベル代表・珈琲焙煎人 狩野知代 さん

主にオーガニック豆の販売のほか、コーヒーに関するさまざまな講座を開講。共著に『休みの日には、コーヒーをいれよう。』(書肆侃侃房)。
http://www.glaubell.net/

丸山珈琲代表取締役 丸山健太郎 さん

1991年軽井沢にて創業。現在は長野県、山梨県、東京都に計8店舗とセミナールームを展開。国際審査員として、世界中の品評会に参加している。
http://www.maruyamacoffee.com

part 1. コーヒーのトレンドを知る サードウエーブの到来

1-1 サードウエーブとは?

今年2月に上陸を果たした、アメリカ・サンフランシスコの「ブルーボトルコーヒー」。サードウエーブ・ブームの中心的存在といわれるが、そもそも"第3の波"以前の第1の波と第2の波は何を指すのだろうか。

大まかに分類すると、ファーストウエーブはアメリカでコーヒーが大量消費されるようになった時代のこと。セカンドウエーブは60年代から始まったおいしいコーヒーを求める動きを指す。その中からエスプレッソやカフェラテを提供する、"シアトル系"と呼ばれるコーヒーショップが台頭していった。

2000年頃登場したサードウエーブは大企業化したシアトル系に異を唱え、高品質なコーヒーを求める潮流だ。小さなロースター(焙煎所)たちが主役となり、「シングルオリジン」、「ダイレクトトレード」など新しいキーワードに焦点を当てている。長く日本のカフェ文化を見つめ、発信し続けているライター・喫茶写真家の川口葉子さんはこう解説する。

「サードウエーブという概念自体は、あくまでもアメリカのもの。日本には独自の伝統的なコーヒー専門店文化があります。ただ、ここ数年は、サードウエーブのお店のスタイルに共感する若い人々が、東京を中心に小さなロースターリー&カフェを出店するケースが目立って増えてきました」(川口さん)

1-2 スペシャルティコーヒー

サードウエーブとともによく耳にする言葉が"スペシャルティコーヒー"。早くから着目していたのが、丸山珈琲代表取締役の丸山健太郎さんだ。

「スペシャルティコーヒーとは、ひとことで言えば"おいしいコーヒー"のことです。現在は各国にスペシャルティコーヒー協会が設立されていますが、最終的に"味覚"に関わることなので、数値や条件で判断して認定を与える、ということを目的とした協会ではありません。2大協会であるSCAA(全米スペシャルティコーヒー協会)とSCAE(ヨーロッパスペシャルティコーヒー協会)では、アメリカは生豆の質を重視し、ヨーロッパは最終的な1杯のコーヒーの味を重視する、という傾向の違いはあります。2000年ごろから国際品評会が行われ始め、結果的に世界中のテイスター同士での味覚のすり合わせが進みました。80点以上のスコアが出るコーヒーをスペシャルティコーヒーと評価します。品評会で入賞した豆などはわかりやすいですがそれはスペシャルティコーヒーのごく一部です。品評会ものでなくてもスペシャルティコーヒーはたくさん存在しています」(丸山さん)

1-3 風味がバラエティ豊かに

スペシャルティコーヒーの豆の個性を表現しやすいといわれる" 浅煎り"。これまでと、どう違うのだろうか。

「初めての人は、"今まで経験したことのない酸味"を感じるのではないでしょうか。苦みの中に甘みやコクを感じる深煎りと異なり、浅煎りは高品質のコーヒーが持つフルーティさなど、酸の質が際立ちます。楽しみ方の選択肢が増えたととらえたらよいのではないかと思います」と、「グラウベル」代表の焙煎人、狩野知代さん。「豆のオリジナルが出やすい、"きれいな味"。今までコーヒーがあまり好きではなかった人にこそ、飲んでもらいたいです」(丸山さん)

Aha! 日本におけるカフェ流行の変遷
1996年、スターバックス上陸前後から興隆したカフェブーム。カフェラテなどのドリンクを採り入れつつインテリアにこだわり、心地よい空間を提供して人気に。日常に定着するにつれフードのクオリティーも進化。そこへスペシャルティコーヒーの潮流が訪れ、コーヒーの味そのものに注目が集まっているのが現在。果たして次はどんな動きが?
part 2. 決め手は豆と焙煎
1  2  3