Photography by Yoshiaki Toda

戸田嘉昭の写真レッスン 人生の美しい切り撮り方
被写体をゼロから作る

日経ビジネス定期購読者のためのライフスタイル誌Priv.よりスペシャルコンテンツをお届けします。
(日経ビジネス Priv.プライヴ 2014年 冬号より転載)

そろそろ外で過ごすにはつらい時季になってきたので、屋内で写真を楽しんでみてはいかがでしょう。普段の撮影と違って、これは被写体を自分がゼロから作るという楽しみがあります。そして、それをどう見るか、どう撮るかという面白さがある。今回はシーズンですし、ちょっとクリスマスツリーを意識してみました。

ライティングは天井からの照明で、蛍光灯でも白熱灯でも何でも結構です。蛍光灯だと全体的に固めになるので、コントラストによってキラキラした華やかな感じが強くなります。背景に敷いているのはベルベットで黒が一番濃く、光を反射しません。なければ黒い紙でもいいです。

撮影テクニックはとくにありませんが、三脚は必要ですね。真俯瞰にセットし、被写体から1mほど離す。近づきすぎると光を遮ったり、カメラの影が入ってしまいます。シャッターはセルフタイマーを使います。設定はオートでいいですが、シャッタースピードを速くすると、周辺のピントをぼかすこともできます。そうするとまた違った印象の写真になりますね。少し専門的にいうと被写界深度を浅くするということです。

リボンの色によっても印象が変わり、白や金、赤というのはゴージャスな感じになります。もちろん素材は何でもいいのですが、布や紙など形が自由になるものがいいですね。デジタルカメラなら試行錯誤して、気に入るまで何回でも挑戦できます。そして撮っていくうちに「コレ、面白いな」って発見する。形態の変化によって、イメージを自分のほうで見つけ出すんですね。それこそ砂遊びみたいなもので、偶然にできることが多い。その瞬間を見つけ出す感性こそ大事だと思うんです。

1本のリボンがクリスマスツリーに見えるというのは、普通考えつかないのですが、写真では意外に簡単にできます。自分が意識して形を作ろうとしても最初は難しいと思いますが、偶然性が作り上げ、それで初めて写真になります。では、どうしてクリスマスツリーに見えるか。被写体自体には意味がないのに、そう見えるというのは写真の虚像だと思いますね。もしこれが"寿"といったら、そう見えてくるでしょ? それも人間の心理の面白いところであり、撮影者の意図を映し出す、写真表現ならではの醍醐味だと思います。

やってみると楽しいし、ひとに見せて喜んでもらうのがまた嬉しい。プリントして手書きのメッセージを添えたり、便利なパソコンソフトなどもあるので、クリスマスカードやカレンダーにしてはいかがでしょう。

3 points.

・最初から形を作るのではなく、偶然性のなかから見つけ出すこと。
・試行錯誤しながら、何度もシャッターを切れるのもデジタルならでは。
・撮るだけでなく、プリントすればさらに楽しみが広がる。その気持ちが写真にも込められる。

戸田嘉昭 Yoshiaki Toda
静物写真家

1947年生まれ。ストックホルム大学附属写真専門学校卒業。品格のある美しい静物写真で多くの雑誌編集者から支持を集めている。特に腕時計、宝飾品、化粧品の撮影に定評がある。写真スタジオ㈱パイルドライバーを主宰し、後進の育成にも努めている。日本写真家協会、日本広告写真家協会会員。

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:by Yoshiaki Toda
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:by Yoshiaki Toda
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日本を担うリーダーのためのNO.1ビジネス誌、日経ビジネスの自宅定期購読者にお届けする女性ターゲティングメディアの先駆けとして2000年に創刊。プライヴは読者の「ワーク ライフ バランス」を充実させる上質かつコンテンポラリーな選りすぐりの情報を、美しい写真と独自の視点でご紹介し、数多くの反響と共感を頂いて参りました。