Photography by Yoshiaki Toda

戸田嘉昭の写真レッスン 人生の美しい切り撮り方
自然の象徴、光から学ぶ

日経ビジネス定期購読者のためのライフスタイル誌Priv.よりスペシャルコンテンツをお届けします。
(日経ビジネス Priv.プライヴ 2014年 夏号より転載)

夏ほど光の存在を意識させる季節はありません。そして写真にとっても光は大きなテーマです。そこでこんな写真を撮ってみました。ストライプの影がコップの水で屈折して、面白い効果を上げています。夏の日差しのような感じ。光と影と清涼感、そしてノスタルジー、そんなイメージの世界が浮かんできます。そこには普段見ているはずだけど、意識していなかったものが映っている。つまり撮ることによって意識していく。そこなんですね、写真が一番面白いのは。

基本的には光というのは太陽だし、自然の象徴で、僕はそこからほとんど学んでいると思います。幼い頃に初めて意識したような、光に満ちた世界がありますね。それって深層心理に深く影響しているし、そこで心地よさを感じた光に成長して再び巡り合った時、ハッと思う。たぶん見るということはそういうことだと思います。

でも光って本当に儚いものです。なかなか人に伝えることができないし、それをいつかふと思い出せるように残せたらいいなと思うんです。儚いからこそ何か残したいし、それが僕の写真でもあります。

ある時、浜名湖で夕日を見ていたんです。そうしたらまさに日が沈まんという時間になるとわらわらとカメラを持った人が集まってきました。なぜかというと湖に鳥居があって、そこに夕日が落ちるところをみんな撮ろうとしているわけなんです。

でもそれって誰が撮ってもみんな一緒。光の美しさよりも、鳥居に入る瞬間に価値観を持ってしまうんですね。確かに美しいかも知れないけれど、自分が本当に撮りたいのはこれなのかな?って思いました。それで徐々に後ろに引いていって、その人たちの姿を撮ったんです。すると人の姿が夕日のシルエットになってすごく面白い写真になりました。

自分もそうだけど、最初は予定調和で考えるのだけど、でも現実にその時に見ているものっていうのは、そんな先入観をはるかに凌駕してしまう。それが写真の楽しさであり、ドラマということ。

じつはこの写真の撮影も複雑なようでいてすごく単純なんです。ブラインドの前でコップの水をゴクッと飲んで「ああ、おいしい」という気分を感じる位置に置くだけ。コップの水と白い壁があればできるんですね。そもそも水なんて色も形もないのに、写真ではこうして姿が出てくる。つまりなくても探せるんです。基本的には人為的に作るよりも探したり、見つけるのがいい。発明よりも発見が面白いですよ。

3 points.

・撮影ではまず光を意識する。なぜ自分がそこに惹きつけられるのか。
・予定調和を目指さず、目の前にある現実と向き合うこと。
・時には風景や対象に一歩近づいたり、逆に離れてみる。

戸田嘉昭 Yoshiaki Toda
静物写真家

1947年生まれ。ストックホルム大学附属写真専門学校卒業。品格のある美しい静物写真で多くの雑誌編集者から支持を集めている。特に腕時計、宝飾品、化粧品の撮影に定評がある。写真スタジオ㈱パイルドライバーを主宰し、後進の育成にも努めている。日本写真家協会、日本広告写真家協会会員。
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日本を担うリーダーのためのNO.1ビジネス誌、日経ビジネスの自宅定期購読者にお届けする女性ターゲティングメディアの先駆けとして2000年に創刊。プライヴは読者の「ワーク ライフ バランス」を充実させる上質かつコンテンポラリーな選りすぐりの情報を、美しい写真と独自の視点でご紹介し、数多くの反響と共感を頂いて参りました。