日本人の「精神」を皿の上に表現する
料理人・山本征治氏の"スピリット"

日本料理というと、どんな料理を思い浮かべるだろうか。

たとえば、「龍吟」のおまかせコースで表現されるのは、四季折々に全国各地から届けられる旬の食材ならではのみずみずしさや生命の躍動感、滋味あふれる味わい。夏の季節であれば、清流を力強く泳ぐ凜とした鮎の姿を思わせる炭火焼きのひと皿や、夏の風情を感じさせるふっくらとした鱧と松茸の椀。冬には、ふぐのコースが供される。選び抜いた天然素材の持つ力強い味わいが、口の中に豊かに広がり、それが体の中のほどよい場所にすとんと収まっていく幸せな感覚。

それが、同店の料理の真骨頂であり、食べることを心から楽しむ多くの人たちに、何度も足を運ばせるゆえんとなのだろう。

「日本料理は、日本人が伝統的に持っている本物のひとつであり、それはすなわち我々の"精神"だと考えています」

それは、歌舞伎や能、相撲といった日本人がつくり上げた"本物"というべきもののひとつだ。

料理人を目指す日本人にとって、フランス料理やイタリア料理は未知のものへの憧れが大きい。それに対して、日本料理は自らが生まれ育った土地に伝統的に根づいてきたもの。つまり、日本人が唯一、オリジナリティーとして世界に発信できる料理なのだ。

山本氏が料理人を目指すにあたって、あえて「日本料理」というジャンルを選んだのは、日本人としての"精神"を極めたかったからだという。

「日本料理を取り巻く大きな世界観の中で、その本質をひと言で伝えることは到底無理なことです。しかし、それは私にとって紛れもなく"人生のすべて"といえるでしょう」

この言葉には、山本氏の日本料理に対する覚悟があらわれている。

日本料理「龍吟」は山本氏が33歳の時に東京・六本木に開業。
多彩な表現を持つ日本料理で高い評価を受け続けている。

4月に発表された「The S.Pellegrino World's 50 Best Restaurants 2014」(サンペレグリノ 世界のベストレストラン50)において、33位にランクインし5度目の入賞を果たした日本料理「龍吟」。オーナーシェフの山本征治氏は、今や日本のみならず海外においても、もっとも有名な料理人のひとりといえるだろう。

今回は、日本料理の魅力を独自のアプローチで世界に発信し続けている山本氏に、その神髄を語っていただいた。

料理人は素材の声を伝えるメッセンジャーであれ
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