時代を超えて愛される
ハンス J. ウェグナー「Yチェア」

20世紀の北欧デザイン界に多大な功績を残したデンマークの家具デザイナー、ハンス J. ウェグナーの作品のなかで最も愛されている家具、それが名作「Yチェア」だ。

世界的ロングセラーとなった理由は、座るとすぐに感じられる。背に沿うような曲線的フォルムと、柔らかくクッション性のある紙のひもを編んだペーパーコードの座面の心地よさを体感できる。

日本で特に高い人気があるのも、Yチェアの特徴のひとつ。
座面の高さが日本人の体型に合っていて、軽くコンパクトなデザインが日本の住宅事情に則しているともいわれているが、木の風合いやモダンすぎることのないデザインなども、日本の住環境にしっくりくるのかもしれない。

Yチェアは中国の明時代の椅子にインスピレーションを得てデザインされたものだといわれるが、明時代の椅子と大きく違うのは、製造工程で機械化が進められたことだろう。手づくりが当たり前だった時代に、ウェグナーは製品のパーツの精密さとクオリティーの向上のために機械の導入を積極的に行った。自分の作品は「芸術品ではなく実用品だ」と語った彼の言葉からも、ウェグナーはアーティストではなくクラフトマンでありたかったのだということが伝わってくる。

その決意が、時を超えて不動の人気を誇るYチェアを生み出したのだろう。

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時代を超えて選ばれ続けているものや、価値観の背景にある考え方や本質はどのようなものなのか。

「本物」をテーマにさまざまな分野の目利きに毎回ご登場いただき、その視点から本物の価値をひもとく本連載。

第1回は不朽の名作家具として半世紀以上にわたり愛され続けている、ハンス J. ウェグナーの代表作「Yチェア」を、そして数々の名作を有する北欧家具の魅力を、カール・ハンセン&サン社CEOクヌッド・エリック・ハンセン氏に聴いた。

クオリティーを守り続けている職人の技術と伝統
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