第5回 アクロヨガに出合い、自分だけの新しい人生がはじまった

35歳のアレッサンドラは今、情熱を傾けていることがある。アクロバットなポーズをとるヨガ、アクロヨガの発展モデルをつくろうとしているのだ。従来のヨガは一般に定着しているものの、「エスニックにひかれる変わった人がやるもの」との先入観もイタリアではまだ強い。

彼女自身の経験から、ヨガによって体が軽くなるのは確かだ。多くの人にそのよさを分かって自然に実践してほしい。

アクロビブスに励むアレッサンドラ

アレッサンドラが、今に懸けるのはなぜだろう。

小さいころから1歳違いの兄と一緒にスポーツになじんできた。幼児のころの水泳、小学校から高校生まではダンス。クラシック、ジャズ、モダン、どのジャンルもこなした。大学に入ると、夏はカナリア諸島やカリフォルニアなどでサーフィンに夢中になった。冬はスノーボードだ。

大学で企業コミュニケーションを専攻し、卒業後はマイクロソフト社に入った。マーケティングやイベントのオーガナイズは面白いが、商品そのものが好きになれなかった。3年ほどして、ウェブマガジンでファッションのトレンドを追う仕事についた。ファッションが好きだった彼女は、同時にファッションのブログも書き始める。

大学時代の夏はサーフィンで過ごした。

2009年、イタリアの企業がブロガーを“サポーター”として考えるようになったころ、彼女のブログを読んだデジタルマーケティング会社からヘッドハンティングを受ける。

そこでも興奮する数々の仕事を経験した。ファッション界とも付き合った。しかし多くのクライアントのアカウントマネジャーとして仕事をするうちに、たった一つのブランドのために尽くしたいと考えるようになる。そう思っているとき、アディダス社から誘いを受ける。「これだ!」と思った。ランニングのコミュニティマネジャーだ。好きなスポーツの世界で、コミュニケーションを担当する。

1年ほどして、アクロヨガとの出合いがあった。一緒にやらないかと声をかけてくれる人がいた。20代のときにヨガやポールダンスもやっていた彼女は、好奇心でアクロヨガに触れてみた。爽快だ。子供の世話もありフレキシブルな生活スタイルも探っていたところだったので、フリーランスになる決意をする。

ポールダンスの経験も生きている。

新しい人生のスタートだ。

元プロボクサーのパートナーと組み、アクロヨガのレッスンやワークショップを実施している。インスタグラムに画像をあげると人々は「ワォー!」と喝采する。イタリア国営放送のテレビ番組にも数回出演したことで、化粧品メーカーからコラボレーションももちかけられるようになった。

スポーツの世界でコミュニケーションスキルを活用しながら、今までの経験や好きなことが一点に集まりつつある。そこで、自分たち独自のコンセプトにアクロヨガを発展させていこうと考えている。アクロビブスと名付けた。

自分が主導権をもって道を歩くことが、結果的にいちばん満足のいく生き方であると確信した人は強い。しかもチャンスを即、ものにしやすい。アレッサンドラは、一歩一歩、それを確認しつつある。

アレッサンドラ・ザヴァッタレッリ
Age / 35歳
Job / スポーツ分野のデジタルマーケッター
Address / ミラノ
Nationality / イタリア

安西洋之(あんざい ひろゆき)

上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして独立。デザイン、食品、文化論(ローカリゼーションマップ)などを活動領域としている。著書に『ヨーロッパの目 日本の目――文化のリアリティを読み解く』(日本評論社)、『世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』(クロスメディア・パブリッシング)ほか。
ローカリゼーションマップのサイト http://www.localizationmap.com/