外貨を保有する意義

皆さん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの山田英次です。

前回のコラムでは、資産運用に臨む際に、最初に迫られる決断について、お話をしました。

自分に合った金融商品を選ぶということは、金融商品の持つ重要な3つの特性である『流動性』『安全性』『収益性』のうち、どれかひとつをあきらめる決断をすることである、というお話でしたが、この決断は、当然、皆さんそれぞれの状況、または、資産運用の目的によって異なってきます。

皆さんも、臨機応変に決断を下し、よい選択をしていただきたいと思います。

さて、今回のテーマは、『外貨を保有する意義』となります。ご一読ください。

外貨に興味を持つ3つの理由

2013年以降、外貨運用に関するご相談がかなり増えてきましたが、この要因は、おおむね、下記3点にあると思われます。

①『プライマリーバランス』への不安

プライマリーバランスとは、国の財政が黒字なのか赤字なのかを示す指標ですね。例えば、国の社会保障や公共事業、防衛などに必要となる経費が、毎年の収入でどの程度賄われているかを表すものとなります。敢えて単純な理解をすれば、これが赤字であれば、国の借金は増えていきますし、黒字であれば借金が減っていくことになるということになります。

日本政府は2020年の黒字化を財政健全化の目標として掲げていますが、楽観視できる状況ではありません(日本はバブル崩壊後の1992年から恒常的な赤字となっています)。

→将来、円の信頼度が薄れ、その結果円が売られ、円安になる可能性を危惧している方の相談。

②直近2年程度の為替変動

『円高還元セール』のポスターやのぼりが消えて1年以上が経過しました。直近の大きな為替変動を踏まえて、将来の激変を予想する方も増えてきました。

→為替相場の変動の波を味方につけて、利益の確保を狙う方の相談

③異次元の金融緩和策に対する不安

アベノミクスのカンフル剤として機能してきた異次元の金融緩和策の末を心配する声も、聞かれるようになりました。現在の金融緩和策は、短期的には経済を刺激する妙薬として機能していますが、上手な終息が求められる策でもあります。

→金融緩和による通貨の価値の希薄化に不安を感じる方の相談

為替相場は読めない! だから…

結論をお伝えすると、為替に関しては、予想しないほうがよいと思います。為替の変動は、突然、予期せぬ時間帯、対応できない時間帯に大きな波としてやってくることがあるからです。

もちろん、皆さんが個人として予想し、アクションすることをとめる権利はありませんが、断定的な予想をし、ギャンブル的な取引を行うことは避けていただきたいと思います。

でも、短絡的に、『為替相場は読めないから外貨は保有しない』という考え方をしてしまうことも避けていただきたいと思います。皆さんの資産を為替相場から守る、という目的で考えた場合、逆の発想をする必要があります。

つまり、『為替相場が読めないからこそ、外貨を保有すべきである』ということです。

当たり前ですが、相場が読めないということは、円安にいくか円高になるか分からないということですから、どちらに転んでも準備ができていなければなりません。

例えば、『為替変動が怖いから外貨を持たない』人がいるとします。もし、将来、急激な円安になった場合、どのような状況になるでしょうか。

日本は、火力発電に必要な石油を輸入で賄っている国です。また、食料自給率も4割程度しかありません。従いまして、急激な円安は、電気代や食料品の価格が急上昇することを意味するということになります。当然、ガソリン代や、電気で動いている電車の運賃も跳ね上がることが予想されます。

結果として、『為替変動が怖いから外貨を持たない』方の円の保有資産は、その価値を大きく損なうことになります。実質的な購買力が大きく低下するということです。

ですから、『為替相場が読めないからこそ、外貨を保有すべきである』という考え方が正しいのです。円の他に、ある一定程度の外貨を保有し、『円高になれば円を使って生活』し、『円安になれば外貨を使って生活』するという2つの選択肢を持つことが、恐れている為替変動に対する極めて有効な対応策であることに気付くべきなのです。

少し意地悪な言い方になりますが、『為替変動が怖いから外貨を持たない』方を客観的に見れば、その方の資産管理術は『円安になることはないと断定している』ことを前提としているかたちになってしまうのです。

為替相場が読めないからこそ、外貨を保有しディフェンス力を高めるという選択肢を、ぜひ皆さんにもご検討いただきたいと思います。

外貨運用は中長期で
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