—松浦弥太郎さんインタビューー
いつも心に刻んでいるのは『親切・真心・工夫』
方法論ではなく、気持ちから始まる“掃除の基本”

世界のどこよりも快適で、くつろげる場所であってほしい「わが家」。
そのために自分ができることには、何があるだろう。
『暮しの手帖』編集長を9年間務めた後、Webメディア『くらしのきほん』を立ち上げた松浦弥太郎さんに、日々の住まいのメンテナンスについて、
また年末の大掃除に向けた心の持ちようについて聞いてみた。

1965年東京生まれ。渡米後、アメリカの書店文化に触れ、日本におけるセレクト書店の先駆けとして『COWBOOKS』を立ち上げる。多方面のメディアにてエッセイストとして活躍。2006年から15年3月まで、約9年間『暮しの手帖』の編集長を務め、Webメディア「くらしのきほん」をプロデュース。新聞、雑誌の連載のほか、著書多数。

毎日掃除ができなくてもいい
自分にとっての「暮らし」を考える

歴史ある生活提案誌『暮しの手帖』の編集長を9年間務めた後、2015年からWebメディア『くらしのきほん』に活動の場を移した松浦弥太郎さん。書店主、文筆家としての顔をも持ちながら、暮らしをテーマにしたメディアと関わり続ける理由について、「僕自身が、“暮らし”というものに興味があるからでしょうね」と語る。

「興味があることについては、どういうことだろうと好奇心を持って調べたり、実際はどうなのかと取り組んでみたりする。その一つひとつに感動や発見があり、経験値が上がるごとに楽しさも増していきます。仕事も大事、趣味も大切ですが、それと同じ重さで“暮らし”は僕のなかにあります」

仕事に追われ、毎日の生活を大事にする時間も、心の余裕も足りないと嘆く声も聞かれそうだが、

「暮らしには、『こうあるべきだ』という正解はありません。それぞれの生き方、働き方、家族構成によっても、できることとできないことがある。たとえば掃除にしても、『毎日やったほうが汚れがたまらない』のは事実ですが、『そうしなければいけない』とガチガチに考えなくていい。ましてや、『毎日掃除ができないのはダメな人間だ』と自分を責める必要は、まったくありません。自分たちの生活時間や習慣のなかで、『できることは何だろう?』『どうすれば楽しんで掃除ができるだろう?』と考えれば、いいのだと思います」

掃除を含めた、家事そのものを「楽しむ」。そのためには、自分が暮らしのなかで何を大切にしているかを考えることから始めてはどうかと、松浦さんは語る。

「たとえば僕個人が、いつも心に刻んでいるのは『親切・真心・工夫』。この3つが自分のポリシーであり、すべての行動の基本となる理念です。もちろん僕も仕事が忙しくて、家のことが十分にできないこともある。でもこの3つを心に刻んで、自分のできる範囲のことをしています」

人に対して親切に、真心を持って、自分にできることを工夫する。たとえばトイレを使った後で、さっと拭いておく。最後にお風呂に入ったら、シャワーで壁や床の汚れを流しておく。

「他人から見たら、『めんどうくさそう』とあきれられるかもしれません。でも僕のなかでは、こうしたら自分が気持ちがいいし、次にそこを使う人が気持ちいいだろうと思う。どうしたら家族が喜んでくれるだろうかと考える。方法論ではなく、気持ちなんです」

自分にとって最高にくつろげるわが家、安らぎの場をつくるには
1  2