錆びてしまった包丁を蘇らせるには?

以上は、洋包丁のなかでも、包丁本体が1つの鋼材で作られた「全鋼」と呼ばれるものを研ぐ方法である。

洋包丁には、刃金(はがね:刃に使う金属)の部分を異なる金属で挟み込んだ「3枚合わせ」や「割り込み」という構造のものが存在する。先の方法だと表面と裏面の研ぎ角度は全く同じにはならず、裏のほうが緩やかに仕上がる。しかし、「3枚合わせ」や「割り込み」の包丁は、表面と裏面を全く同角度で仕上げなければならない。この場合、裏面を研ぐ際(先の工程4)に、峰の下の隙間が表面同様に10円玉3枚分になる角度で研げばOKだ。

研ぎ方が異なる「3枚合わせ」や「割り込み」の包丁には刃に刃金と刃金を挟む他の金属との境目がある。包丁の種類が分からない場合は、ここを見て判断できる。

続いて「和包丁」の研ぎ方を紹介しよう。

「諸刃」と呼ばれる洋包丁に対し、和包丁は「片刃(かたは)」という刃の構造が特徴。刃の断面を見ると表面だけが大きく斜めに削り込まれており(この面を切刃:きりは、という)、裏面は一見すると平らだが、微妙に凹んでいる。

和包丁も洋包丁も研ぎ方は基本的には変わらないが、刃を研ぐ角度が異なる。

表面を研ぐ際は、まず切刃全体がぴったりと砥石に当たるように置く。その状態から少し峰を持ち上げ、刃だけが砥石に当たる角度にして研いでいく。一方、裏面は角度をつけず、面全体をペタリと砥石につけて研ぐ。

さて、和包丁の表面の刃以外の軟鉄で造られている部分は非常に錆びやすいが、今回、錆びてしまった包丁のメンテナンス方法もご指南いただいた。

「錆びた包丁は、粉末のクレンザーをかけて、錆取り専用ゴムか、ワインのコルク栓でこすってください。絶対にやってはいけないのが、砥石でこすること。砥石でこすると細かい傷が付き、かえって錆びやすくなってしまいます」と石田さん。先を研ぐ以外に砥石を使うのは、ご法度だ。

錆びは、十分に濡らした包丁に粉末クレンザーをたっぷりかけ、ワインのコルク栓でこすって落とす。最後は水洗いして乾拭きすること

切れない包丁は、切る際に余計な力をかけてしまうので、使っていて疲れるばかりでなく、非常に危ない。また、包丁の切れ味ひとつで料理の味が大きく変わってしまうこともある。包丁を買ってから一度も研いだことがなかったり、最近、包丁の切れ味が落ちた気がするなら、これを機に包丁を研ぐことを始めてみてはどうだろうか? 自分で手入れした包丁なら愛着も湧くし、何より“研ぎ”をマスターすれば、いつでも包丁が気持ちよく使えるのだ。

「うまく研げるようになるには、その包丁に合う研ぎ角度を見つけて、指に覚えさせるしかありません。そのためには、飽きずにやることです」と石田さん。

今回紹介した方法は家庭向けのやり方で、特に難しいことはないが、たとえ失敗しても、包丁がダメになることはない。失敗したら研げる人に研ぎ直してもらえばよいだけのことだ。刃物を扱うのでけがにだけは十分注意して、失敗を恐れずにぜひ挑戦していただきたい。

包丁を中心に、鋏や鍋などさまざまな生活道具が並ぶ日本橋木屋本店。もちろん砥石も各種取り揃えている。店内には包丁を研ぐスペースがあり、スタッフが包丁を研ぐ姿が見られることも
Photography
:by Takashi Yamade
Text
:by Motoki Honma
日本橋木屋本店
住所:東京都中央区日本橋室町2-2-1コレド室町1F
電話:03-3241-0110
営業時間:10:00〜20:00 元日を除き、休まず営業
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