思い入れのある一着だから長く使えるようお手入れを

仕事で着用するスーツは、我々が思っている以上に悪条件にさらされている。
体から出る水分や空気中のホコリ、着席によるシワ。
こうした環境にありながらも、お気に入りの一着と長く付き合っていくなら
日々のメンテナンスは欠かせない。
今回は、洋服ケアのスペシャリストに、正しいスーツのメンテナンス法を伺った。

大事なものを大事に着るのがかっこいい!

ファッションにこだわりの強い人や、アパレル業界関係者からも、絶大な信頼を寄せられる洋服お直しの専門店がある。それが『サルト(SARTO)』だ。イタリアの仕立て職人を意味する店名からも、そのこだわりが窺える。サルトの代表を務める檀正也さんは、イタリアの仕立て職人の技術にも精通しているほか、旬のスタイルも熟知するスペシャリスト。そのため、サルトでは上質な技術で修理するだけではなく、よりスタイリッシュに見えるサイズバランスを提案することができることで評判を呼んでいる。

「スーツは毎日着用せず、ローテーションさせることで長持ちすることに、みなさんが気付き始めたのです。持ち物をローテーションさせる考え方は、洋服よりも先に靴の扱い方として定着しました。オーダーに限らず、それなりの価格のものは大事に着るべきです。しかし、7、8年くらい前まではそんなものも数シーズン着たら、それでお終い、という方が意外と多かったのです。でも、大切に着ればいいスーツは10年くらい持ちますよ」と檀さん。

高価なものを大切に長く着ようという風潮は、震災以降、顕著になったと檀さんは言う。サルトでは、それ以前にもファッション雑誌からの取材を引き受けることが多かったが、震災前は「痩せた」「太った」といった体形の変化をお直しでカバーする記事が多かったそうだ。が、震災以降、人々の意識が切り替わり、いいものを大事にすることがかっこいいと思う人が増えた、と檀さんは身をもって感じている。

そうした世の中の流れに合わせ、過度に流行を追うことも見直されはじめた。

「そんなに流行を追わずとも、かっこよくて長く着られるバランス感にお客さまたちが気付かれた。具体的にはパンツの裾幅は20~21cmの設定がいいとか、短すぎない上着の着丈や、ほどよい身頃のシェイプなどのバランス感です。サイズがきちんと合っていれば、過度に細くしたり、丈を短くせずとも、ちゃんとして見える。ここがポイントなのです。そうしてスーツは普遍的にしておいて、シャツやタイで遊べばいいという考えが定着したように思います」。

毎日、帰宅したらまずはブラッシング

これまでに紹介した話は、あくまで余談である。が、今の時代、洋服との付き合いに、いかにメンテナンスが欠かせないものであるかがご理解いただけたと思う。それでは、具体的なメンテナンス法をご紹介しよう。

「まずはブラッシングが命」と檀さん。「洋服のケアは、ブラッシングですべてが解決するのではないかと思うほど重要です。冬は特に静電気がごみを付けますからね。私の場合、ブラッシングはまず袖から。『下から上へ』を基本にして袖にブラシをかけていきます。

次に両肩を、高いほうから低いほうへ。そのあと、前身頃、背中の順でブラッシングします。『男は背中が肝心!』ですから、背中は特に入念にブラッシングします。普段、自分の姿を鏡で見るのは正面ばかりで、背中には目が届きません。ですから、背中にシワや傷みがないかも併せてチェックするといいですよ。ブラシはすべて下から上へが基本。そして、たまに上から下へ。それが定説のようなので、私もそうしていますが、ブラシ屋の方もそう話していたし、イタリアのテーラーでもそのやり方が採用されています。

もし、ブラッシングの際、シミや汚れを発見したら、私は濡れタオルで軽くたたいたり、歯ブラシでとったりするようにしています」。ブラッシングには、洋服ブラシを用いるが、これにも種類がある。カシミアなど繊細な素材のものには、カシミア専用ブラシを。

また、ツイードなどは硬めのブラシでも問題はない。このブラッシングにより繊維の間のゴミがとれるほか、毛の絡みがほぐれ、毛玉を抑える効果があるという。さらに「ブラシをかける際の角度によって、効果も違います。ブラシを寝かせて毛をほぐして表面をなじませたり、ブラシのエッジを立てて絡んだ毛玉を取り除いたりと、使い方もいろいろ」というから、練習してみてほしい。

逆につるすのがパンツケアの基本
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