IEDAN 05 × 鈴木啓太さん(元サッカー選手)
「やろう」と決めて、「やること」を楽しむ。
子育てにも生きるトップ・アスリートの思い。

IEDAN
家を楽しむ、家族と楽しむ。
人生に、仕事に、こだわりを持ってまい進するのはもちろんのこと。
家という空間が好きで、家で過ごす家族との時間を大切にしたいという男たち。そんな新しい男性像をGENUINはIEDAN【イエダン】と名付けました。

娘からの無邪気なひとことで、新たなチャレンジへ

「なんだか不思議な気持ちなんですよ、例年この時期にはキャンプに参加して細くなった筋肉を鍛え始めていましたから。寂しさはありますが、『もう鍛えなくていいんだ』と思うと、どこかほっともしている(笑)。引退直後の選手は、みんなそうなんじゃないでしょうか」

と語るのは、元サッカー日本代表MFの鈴木啓太さん。2000年に東海大翔洋高校から浦和レッドダイヤモンズ(以下、浦和)に入団し、昨年11月に退団を発表するまで16年の長きにわたり浦和一筋でプレーしてきた。

ホーム最終節で語った「浦和の男で始まり、浦和の男で終わります」という感動的なスピーチにも集約された、クラブへの熱い思い。その背景にはどんな思いがあるのだろうか。

「ほとんどサッカーを知らない人でも、浦和といえば『サポーターがすごいですよね』と言ってくれる。それだけ熱心なサポーターの視線と声援に囲まれて試合をするのは、もちろん重い責任とプレッシャーも感じますが、それを差し引いても素晴らしい環境だったと思います。あのピッチに立つ喜びは、浦和レッズの選手でなければ感じられない特別な空気なのです」

引退セレモニーからおよそ3ヶ月。家族と過ごす時間も増え、精神的にもリラックスしているというが、「年長の上の娘が時々、『パパ、次のお仕事は何するの?』と聞いてくるんです(笑)。サッカーの話は家であまりしてこなかったのですが、妻が日ごろから『パパがサッカーをがんばっているから、習い事ができたりお洋服が買えたりするんだよ』と言ってくれていたから、幼いなりに心配になってしまったのかもしれませんね。僕自身はしばらくゆっくり考えればいいかと思っていましたが、子どもにあまり心配かけてもいけないなと」

新しいチャレンジとして今年1月に発表しのが、腸内フローラ(腸内細菌叢)の解析ビジネス。大学の研究機関などと連携して、健康面からアスリートのコンディションやパフォーマンスを支える事業を進めたいという。

親を喜ばせたい、驚かせたいという純粋な気持ちを取り戻して

子育てにおいて大切にしているのは、子どもの自主性だという。

「結局、自分で『やろう』と思ったことでしか人は伸びない。たとえば100人の子がいて、99人が途中で諦めてやめたら、諦めていないその子が1番なんですよ。いくら周りが『あれやれこれをやれ、あれやっちゃダメだ』と言っても、最後は本人が『自分はこれじゃだめだ、やらないとまずい』と思わない限りは、何かを極めることはできないと思います」

そうした考えにたどり着いたのは、ミシャ監督(2012年から浦和の監督を務めるミハイロ・ペトロヴィッチ氏)の影響が大きいと鈴木さんは語る。

「監督は、選手がチャレンジすることに関しては何も言わない人だった。パスが通らなくても、まずは『ブラボー!』と言う。よくそこを見ていたな、チャレンジしたなという点を評価してくれる。すると僕らも、失敗したからこそ、次はどうすればうまくいくだろうと考えて技術を磨くわけです」

監督が厳しく指摘したのは、ミスを恐れる心だ。

「『ミスを怖がっていたら、サッカーが面白くないだろう』。楽しまないと、いいサッカーはできないぞと。もう一つが『みんながあそこに出すと思うところにパスを出すな。おーっと驚くところへ出せ。そういうプレイが、人を魅了するんだ』ということ。自分も子どものころ、見に来てくれる両親を驚かせたい、喜ばせたいという気持ちで試合に挑んでいた。もちろんプロには勝たなければいけないという厳しさも必要ですが、ミスしちゃいけない、失敗してはいけないという気持ちから、『スタジアムにいるみんなを驚かせたい』というふうに考え方を変えたことから、もう一度、子どものころのようにサッカーを純粋に楽しめるようになりましたね」

子どものころに練習の相手をしてくれた父親には今も深く感謝しているという。

「出勤前に練習へ付き合ってくれたり、子どもがやりたいことは真剣に応援してくれる人でした。遊ぶときも子どもの視点に合わせるのではなく、親が真剣に楽しんでいる姿を見せて『付いてこいよ』という感じ。スキーに行くときも、両親がすごく上手に滑っている姿を見せて、『お前も滑りたいか? ならスクールへ入ってこい』とまずは放り込まれて(笑)。自分もこれだけ滑れるようになったんだと見せて初めて、『じゃあ一緒においで』と言ってくれる」

僕らが楽しむ間にママも楽しむ。スーパーダディの子育て術とは

遊ぶときは真剣に遊ぶ。それは一種、父親の役目ではないかと鈴木さん。妻には怒られるかもしれないがと笑いつつ、「子どもって、家の中でもいろんなところにのぼりたがるじゃないですか。僕は『危ないからやめなさい』と言うより、『どうやったらのぼれるだろうね』と一緒に考える。あそこの手すりにつかまり、こっちに足をかけてとか。もちろん下で受け止める準備はしていますが、危ないことをして初めて分かることもあると思うからです」

選手時代も試合や遠征がないときは家にいる時間が長かったが、子どもとじっくり向きあう時間が取れるのはうれしいことだと鈴木さん。

「いちばん好きなのは、一緒にお風呂に入って寝るまでの時間ですね。上の子が生まれたころから、家にいるときは「風呂係」は僕の役目なんですよ。下の子は最近、まだ遊びたくてぐずぐずしていても、僕が『先に入るぞ』と服を脱ぎ始めると一緒にわーっと脱ぎ始めて風呂場まで付いてくる。上がってからも、パジャマを着たがらなくて駆け回るのを追い掛けていると、『幸せだなあ』ってつくづく思います(笑)」

忙しいとつい見過ごしてしまう子どものささやかな成長を、見守ることの喜び。日ごろ、子育てを担ってくれる妻への感謝。そうした気持ちから生まれた「スーパーダディ協会(SDA)」の活動にも、選手時代から取り組んできた。

「僕らのようなアスリートは特にそうですが、仕事は常に戦いの場。家庭はできれば平和なほうが望ましいわけで(笑)、そのためにも妻に感謝し、時々、家事を休んで自由な時間を楽しんでほしいと。その間、僕ら父親が子育てを手伝う──というより、自分の趣味や遊びに子どもを巻き込んで『楽しんでいるから、ママも楽しんでおいでよ』というイメージでしょうか」

やらされていると感じるより、自分から「やろう」と決めて最善の道を探し、その過程を心から楽しむ。スタジアムを驚きで満たした鈴木さんの新たなチャレンジに、これからも熱い注目が集まりそうだ。

KEITA SUZUKI

1981年、静岡県静岡市生まれ。2000年にJリーグ浦和レッドダイヤモンズに入団。2006年には日本代表にも選出され、オシムジャパンの中核として活躍する。2008年にファッションモデルの畑野ひろ子さんと結婚。二児の父親として、現役時代からスーパーダディ協会(SDA)にも参画。2015年、現役引退。

ジャケット ¥125,000/タリアトーレ
パンツ ¥25,000/ソリード
チーフ ¥9,500/ルイジ ボレッリ
問 すべてビームス ハウス 丸の内 03-5220-8686
Tシャツはスタイリスト私物

Text
:by Mary Yamada
Stylist
:by Masaaki Mitsuzono
Hair-Make
:by Uchikane Yukifumi