豪華寝台列車“ザ・ガン”でオーストラリア大陸を優雅に疾走

東京とアメリカにある自宅の往復含めて、1年間の半分以上は旅の途上という私。最近は、ただ移動を急ぐのではなくその過程を楽しむのも旅の贅沢だと思っている。オーストラリアでの寝台列車での旅は、そんな贅沢の一つだ。

オーストラリアのノーザンテリトリー(北部準州)の南部は、レッドセンターと呼ばれる赤土の砂漠地帯。そこには「地球のへそ」とも呼ばれる巨大な一枚岩“ウルル(エアーズロック)”や36もの岩からなる巨岩群“カタジュタ”がそびえる。

赤い色をした巨大な“ウルル”は、オーストラリア先住民アボリジニの聖地だ。

ここに向かうには、日本からオーストラリアの国内便が飛ぶ空港で乗り継ぎ、エアーズロック空港から入るのが一番手っ取り早い。しかし、時間をかけて広い大地が徐々に赤土に変わってゆくさまを眺めながらの移動こそ、大陸のスケールが感じられるもの。そんな思いを、豪華な寝台列車が可能にしてくれる。オーストラリア大陸縦断列車の「ザ・ガン」だ。

オーストラリア大陸を、北はダーウィンから南はアデレードまで2979kmを3日間(3泊4日)かけて走る。経由地のアリススプリングスは、アウトバックと呼ばれる砂漠地帯の拠点として開けた町。ダーウィンからこのアリススプリングスまでをこの「ザ・ガン」に乗って移動し、そこから飛行機でウルルに向かうことにする。

全長774m、40両編成の列車は、先頭車両から後ろまで見通せないほどの長さ。

「ザ・ガン」の名前は、150年以上前にオーストラリアの未開の砂漠を探検するために連れてこられたアフガン人のラクダ御者に由来し、車両にもマークとして使われている。

そんな冒険時代を想起させる名前だが、車両内は極めて優雅。乗車したゴールドサービスの2人用キャビンは、ゆったりとした3人掛けの椅子で座り心地がよい。車両で音楽を楽しめるオーディオサービスがあるので、懐かしいスタンダードナンバーに合わせて、お茶を飲みながらしばし車窓からの風景を楽しむ。お茶とコーヒーを自由に楽しめるセルフサービスのコーナーが、車両ごとに設けられているのだ。

清潔で機能的な洗面室にはシャワーもあり、ゆっくりと湯を浴びることができる。夜にはクルーがぱりっとしたリネンでベッドメイキングをしてくれ、まさにコンパクトな動くホテルそのもの。

コンパートメントは機能的かつ、落ち着いた内装でプライベートな空間だ。

食事は、豪華な内装の食堂車クィーンアデレードレストランで。食事やワインなどアルコール類も含めて飲み物は料金に含まれていて、ランチ、ディナーとも3品のコース。ローカルの食材を生かした料理で、夜にはカンガルーやクロコダイルの肉がテーブルに出ることも。味も盛りつけも洗練されて申し分ない。

ランチのメインから、フエダイのグリル。
ヒヨコ豆のサラダにミントヨーグルトのドレッシング添え。

途中停車の駅では、オフ・トレイン・ツアーというアクティビティに参加することもできる。昼過ぎに到着したキャサリン駅では、ニトミルク国立公園にある切り立ったキャサリン渓谷の崖の間を行くクルーズツアーが開催された。鬱蒼とした緑に囲まれた川を船で進み、何百万年という時間がつくり上げた砂岩の絶壁を見上げて、オーストラリアの自然の妙に触れる。

季節や天候によって水深や切り立った崖の様子が大きく変わるニトミルク国立公園。

夕刻、再び列車に戻り、バーカウンターのあるラウンジ車両でディナー前の時間を楽しむ。オーストラリア各地や世界からやって来たゲストが、談笑したりカードを楽しんだり、思い思いの時間を過ごしている。スパークリングワインをついでもらい、窓の外に流れていく夕景を楽しみながらの一杯は、列車の旅の醍醐味だ。

スパークリングワインも含めラウンジで提供されるドリンクは料金に含まれている。

そして、一夜明けて。目覚めの車窓風景は感動的だ。ブラインドを上げると、朝日が差し込み、大地は真っ赤な色に変わっていた。優雅な空間で移動しながら、雄大な自然が肌で感じられるオーストラリア大陸縦断列車は、魅力にあふれたゆとりの旅のスタイルだ。

朝起きると、車窓から見えるのは、
出発地だった熱帯雨林気候のダーウィンとは全く異なる赤土の大地だ。

*ダーウィンからアリススプリングスまでのゴールドサービスは、早割最安値で大人1人料金859オーストラリアドルから。(6カ月以上前の予約の場合。運行期間によって異なる。詳細は下記の日本語サイト参照)

ザ・ガンTHE GHAN
http://www.gsr-japan.com/new/trains/the_ghan/index.html

取材協力/ノーザンテリトリー政府観光局
http://www.australiasoutback.jp

小野アムスデン道子(おのアムスデンみちこ)

ロンリープラネット日本語版の立ち上げから編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。日本旅行作家協会会員。

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