第5回 ミラノ・デザインウィークのレクサス

デザインのお祭りともいわれる「ミラノ・デザインウィーク」が、2016年4月にイタリア・ミラノで開催されました。家具の国際見本市として始まった催しですが、いまはミラノ中でデザインをテーマにしたイベントやインスタレーション(空間を使った表現)が開かれるようになって、世界的な人気を呼んでいます。日本のレクサスのインスタレーションも毎年、大きな話題を呼んでいます。

ミラノのトルトーナ地区に「スパツィオ・レクサス−トルネリア」を設けたレクサス。2016年のテーマは「アン・エンカウンター・ウィズ・アンティシペーション」とされていました。「予見をテーマに、デザインを通じて予期せぬ驚きと感動の体験を提供する」とレクサスでは説明しています。

2016年度の注目点は、オランダ・アムステルダムを拠点に活動し、プロダクトデザインに幅広い実績を持つ「フォルマファンタズマ」による会場構成でした。加えて食いしんぼうには、2015年12月に、開店から10カ月で伊ミシュラン一つ星を獲得した「リストランテ・トクヨシ」(ミラノ)の徳吉洋二シェフが手がけた、料理による表現も大きな話題でした。

日本の鳥居からインスピレーションを得たとも聞く木枠を使った「ゲート」をくぐって会場に入ると、レクサスの塗装技術を使ったオリジナルデザインの椅子。「エリア1 クラフトマンシップとの出会い」です。その先には障子のようなパーティション。そこをくぐると、「エリア2 予期せぬテクノロジーとの出会い」です。約8000本の糸を撚(よ)って、そこにベネツィアの職人が1本ずつ色づけをすることでクルマが3Dで見えるインスタレーションが展開されていました。

障子をイメージにしたパーティションの向こうには、糸を手で染めて作った3DのレクサスLF-FC

「エリア3 次世代イノベーションとの出会い」では、2015年秋の東京モーターショーで注目された燃料電池で走る高級セダンコンセプト、レクサスLF-FCをイメージして、燃料電池で光るランプを組み込んだ円環や直線のオブジェも。床はピンク色で、無機的なものと、ひとにやさしい感覚とがバランスしていたのも印象的です。ここで徳吉シェフによる味覚体験も提供されました。浮力と透明という2つのキーワードによる意外な味でした。

「リストランテ・トクヨシ」の徳吉洋二シェフ(右端)とフォルマファンタズマの2人
「浮力」をテーマにした徳吉シェフの味覚体験のひとつは、ナスタチムの葉に梅をベースにしたベリージャムをのせたもの

同時に恒例ともいえる「レクサス・デザインアワード」の授賞式も開催されました。次世代クリエイターを支援・育成するのが目的というアワードです。今回は「アンティシペーション」がテーマ。世界73カ国から1232作品の応募があったなかから、寒天を梱包材に利用するという日本のデザイナー3人「AMAM」のプロジェクトがグランプリに選ばれました。マイクロプラスチックによる環境汚染が問題になっているいま、タイムリーなソリューションと評価できるものです。

荒木宏介、前谷典輝、村岡明3氏の「AMAM」による「Agar Plasticity」は寒天(アーガー)からつくられた梱包資材の提案

小川フミオ

自動車とカルチャーを融合させた『NAVI』(二玄社)、日本で最も歴史ある自動車誌『モーターマガジン』(モーターマガジン社)、『アリガット』(IMAGICAパブリッシング)の編集長を経て、2004年よりフリーランス。著者に『カルロス・ゴーンへの警鐘』(02年刊、阪急コミュニケーションズ)、『ひとりで行ける上質ごはん』(東京書籍)他、多数。