第4回 新型プリウスという驚き

自動車乗りにとって大変喜ばしいのは、このところの燃料価格の値下がりです。この原稿を書いている2016年2月初頭の時点で、原油価格は低値安定。自動車の燃料にしても、レギュラーガソリンをリッターあたり100円以下の価格で提供するサービスステーションまで登場しています。

一時期、ガソリン代がリッター400円を超すと言われていたのが、ウソのようです。そのときは、燃費のよいハイブリッド車が救世主のように思われていました。一般的なガソリン車に対して、燃費が倍以上よいのですから。

ハイブリッド車は、いっぽうで、価格が高めです(レギュラーガソリン車に対して50万〜100万円高)。そこで昨今、ハイブリッド車を買って、燃料代で差額を“精算”しようと思ったら、8万キロ以上走行する必要があるともいわれます。

欧州では、自動車のCO2排出量の規制が厳しくなり、パリでの気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が話題になっています。この面からみると、リッターあたり25〜40キロ走行するハイブリッドの存在意義は薄れていないのですが。

ハイブリッド車を取り巻く環境が変化するなか、トヨタ・プリウスが4代目にフルモデルチェンジしました。燃費がリッター40キロを超えるモデルまであるのが、ひとつのセリングポイントです。ただし、上記で述べてきたように、いまは燃費だけでユーザーに商品性を訴求しようとしても逆風が吹いています。

しかしながら、新型プリウスは、燃費だけが魅力のクルマではありません。乗ると、これまでのプリウスとは明らかに一線を画しています。初代から3代目までが同じ方向を向いたグループだとすると、新型プリウスはまったく別の考えで開発された、正常進化でなく、大きな飛躍が感じられるモデルなのです。

新型プリウス(税込み2,429,018円〜)は全長4540ミリ、全幅1760ミリ、全高1470ミリ
写真提供:トヨタ自動車株式会社

新型プリウスの魅力は、運転しての楽しさです。メーカーによると、「走りの楽しい」プリウス、となります。実際、その言葉にウソはありません。ドライバーが座る位置は少し低くなりました(後席の前方視界がよくなったという副次的なメリットもあります)。ハンドルを握ったときの姿勢が、従来よりはるかに自然になりました。

室内はホワイトが効果的に使われ新しさが感じられる
写真提供:トヨタ自動車株式会社

発進のときの軽快さは、電気モーターのメリットを活かしたハイブリッド車ならではのもので、そこは従来型と共通しています。そのあとの加速感は、より軽快。1.8リッター4気筒エンジンと電気モーターという組み合わせは従来と共通ですが、細かく改良が加えられています。電池の搭載位置などを工夫して、車両の重心高を下げているのも特徴です。ハンドルを切ったときの車体の動きは素直で、ドライバーの意思どおりにカーブを曲がれます。安定していながらも、楽しさが前面に出ています。

聞くところによると、トヨタ自動車では、 “この乗り味がトヨタ車”といった主張が重要と判断。世界で通用する明確なキャラクターを製品にもたせるために、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)と呼ばれるクルマづくりのコンセプトを導入したそうです。社内のエンジニアたちはいま、新しい世代のトヨタ車をつくろうと頑張っている最中といいます。前輪駆動車で、TNGAによるクルマづくりを反映した第1弾が新型プリウスなのです。

今回は4WD(2,673,491円〜)も発売された
写真提供:トヨタ自動車株式会社

冒頭触れたように、燃費だけで買う意義を見失うときもあるハイブリッド。新型プリウスは、かたや燃費、かたや運転する楽しさと、ふたつの面を備えています。自動車好きもプリウスに失望することはないと思うほどです。市場の変化に柔軟に対応するトヨタ自動車の姿勢は、驚くばかりです。それが新型プリウスの3番目の特徴といえるかもしれません。

小川フミオ

自動車とカルチャーを融合させた『NAVI』(二玄社)、日本で最も歴史ある自動車誌『モーターマガジン』(モーターマガジン社)、『アリガット』(IMAGICAパブリッシング)の編集長を経て、2004年よりフリーランス。著者に『カルロス・ゴーンへの警鐘』(02年刊、阪急コミュニケーションズ)、『ひとりで行ける上質ごはん』(東京書籍)他、多数。