第3回 ディーゼル車篇その2 ディーゼルは大丈夫

ディーゼルエンジン車に乗ってみることをお勧めします、と書いたあと、フォルクスワーゲンの米国での問題が報道されました。あちらで販売しているクルマの排ガスの検査で不正をしていた、というものです。言うまでもなく、ごまかしはあってはならないことです。人命にかかわることではないとはいえ、知らされていた以上の量の窒素酸化物を、自分が乗っている車両が出していることを知ったオーナーのなかには、だまされたと憤る人もいるはずです。消費者との信頼関係が崩れてしまいます。

幸い日本では、当該車両は正規輸入されていないため、オーナーとして悩むことはないようです。それは少なくともよかったことです。独フォルクスワーゲンのCEOに先日会った時、「自分は(BMWから転職して)4カ月しか経っていないため、不正が起きた本当の理由の解明にまで至っていないが、これから必死にやります。ユーザーの信頼を裏切って本当に申し訳ないことをした。心から謝ります」と言われました。

ディーゼルは、では、よくないのでしょうか。全生産車中約4割がディーゼルエンジン車というBMWは、今回の問題が世界的になった直後、声明を出しました。そこで、「世界中の政府、とりわけ欧州連合において、CO2を含む排出ガスに対して厳しい規制が設けられている。欧州における2020年目標値(注:走行キロあたりのCO2排出量を制限するもの)は、先進的なディーゼル・エンジンの積極活用と、さらなる電動化の組み合わせによってのみ達成が可能である」としました。きちんと規制に適合したクリーンなディーゼルエンジンのすぐれた燃費はこれからも環境問題にとって大事だとする姿勢です。

フォルクスワーゲンと、それに同じグループに属するアウディは、予定していたクリーンな新世代ディーゼルエンジンの日本への導入を、当初の予定より延期すると発表しました。理由は、問題になったディーゼルエンジンと、ユーロ6と呼ばれる欧州の規制値(日本も含む)をクリアした新しいディーゼルエンジンとの違いについて、世間一般の理解がもう少し広まるのを待ちたいということのようです。

さきのBMWをはじめ、メルセデス・ベンツ、ジャガー、ボルボ、さらにはプジョーなど、ほかの欧州メーカーは、日本でディーゼルエンジン車を販売することに積極的です。SCRという複雑なシステムを使うのが特徴です。搭載した尿素(アンモニアの代替)を排ガスに噴き付け、化学反応によって窒素酸化物を窒素と水に還元する仕組みです。現在、日本でクリーンディーゼルとして販売されている欧州車は、ほとんどがこのシステムを採用しています。

ディーゼルエンジン車は、最新のメルセデス・ベンツC220dや、新世代2リッターディーゼルを搭載したBMW320dなどに乗ると、力がたっぷりあるうえ燃費にすぐれているため、魅力は薄れていないと感じます。フォルクスワーゲンやアウディのディーゼルも素晴らしい出来なので、不正への謝罪を受け入れたら、消費者としては日本でも販売してほしいと思います。さらにメルセデス・ベンツ日本では、現時点で究極のエコシステムといわれるディーゼルエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを採用したS300hも発売しました。水素を使う燃料電池車は"究極"と言われることがありますが、二次あるいは三次エネルギーといわれる水素をつくる効率と途中で発生するCO2の量を考えると、当面ハイブリッドに分があるようです。

メルセデス・ベンツC220dアバンギャルド(559万円)にはステーションワゴンも
写真提供:メルセデス・ベンツ日本株式会社

話がディーゼルから発展してしまいますが、いっそ最新のハイブリッドは?という向きには、日本なら4世代目になる新型プリウスがまもなく発売になるのが嬉しいニュースでしょう。海外メーカーは充電可能で電気モーターで走れる距離が長いプラグインハイブリッド(PHV)に力を入れています。フォルクスワーゲンはゴルフGTEという、走らせても楽しいPHVを日本で展開しています。アウディはA3スポーツバックe-tron(イートロン)を発売しました。スムーズで力があって静かで、しかも品質感があるのに感心しました。

アウディA3スポーツバックe-tron(564万円)はリッター23.3kmのPHV
写真提供:アウディジャパン株式会社

今回は話がすこし硬くなってしまいましたが、真摯な姿勢でこれからの社会に向けた製品を作り、それを受け入れることで、クルマの未来は明るくなるのです。(次回はもっと明るい話でいきましょう)

小川フミオ

自動車とカルチャーを融合させた『NAVI』(二玄社)、日本で最も歴史ある自動車誌『モーターマガジン』(モーターマガジン社)、『アリガット』(IMAGICAパブリッシング)の編集長を経て、2004年よりフリーランス。著者に『カルロス・ゴーンへの警鐘』(02年刊、阪急コミュニケーションズ)、『ひとりで行ける上質ごはん』(東京書籍)他、多数。