第1回 日本車篇 軽自動車は日本の生んだゲイジュツだ

日本人の箱庭感覚とか小さなものを作り上げるときの情熱とか、よく取りざたされます。その国民性?が傑作を生んでいるなあと感心させられるのが、昨今の軽自動車です。

軽自動車はいまさら説明するまでもないですが、端的にいうと黄色いナンバープレートのクルマ。乗用車もあれば商用もあり、法規上は全長が3.4m以下、高さ2.0m以下、幅が1.48m以下、エンジン排気量は660cc以下と定められています。税金も普通乗用車に比べて安いし、維持費の面で多少メリットがあります。

公共交通が発達していない地方都市でよく売れていることから、軽自動車は交通行政や税制など日本の固有性が生み出した、ある種の交通文化といえるかもしれません。さらに、日本人の勤勉性は、燃費の向上に力を注ぎ、いまやハイブリッドの普通車をしのぐ燃費を実現する軽自動車まで登場しているほどです。

しかも、昨今、積極的に乗りたくなるようなクルマが、続々登場しています。ひとつは走らせて楽しいクルマ。ダイハツ・コペンに、ホンダS660、それにスズキ・アルト ターボRSなど、小さくて軽い車体のメリットを生かした、運転が楽しいモデルです。

ダイハツとホンダの2台は、二人乗りのオープンカーというのも大きな特徴です。こんなクルマ、海外にはありません。しかも、前者はボディパネルを交換して車体色を変えられること、後者はエンジンを車室の背後に搭載した本格的な内容です。アルト ターボRSは4枚ドアを備え広い室内を持った機能性とともに、スポーティーな走りが楽しめます。「日本に住みたい」とクルマ好きの欧州人が、あるとき言ったの覚えています。

ホンダS660(198万円〜)は2015年3月に発表されて、注文殺到という

加えて、スズキ・ハスラーは、軽自動車に流行のSUVを組み合わせ「軽自動車SUV」という新ジャンルを作り出したという点で特有性を持っています。使い勝手がよく考えられていて、たとえばリアシートには前後スライド機構が設けられ、大きな荷物を積むときにも便利です。2トーンの塗り分けが似合うキュートな車体と利便性。軽自動車ならではのメリットを、大きく生かしています。

スズキ・ハスラー(107万8920円〜)は、老若男女だれでも似合うのが魅力

昨今の軽自動車は、スマートフォン連動型ナビゲーション(カーナビからスマホのアプリを操作できる機能)や、iPhoneを接続してすぐれた音声認識ソフトsiriによるメール送信やナビゲーションなどさまざまな機能も選ぶことができます。現代の若者にとっても、居心地のいい空間なのです。

コンパクトな車体に、エンターテインメント性の高いコンテンツを盛り込んだのが、日本の軽自動車。自動車であって、自動車にとどまらない「遊び道具」ともとらえられるところが、ほかにはない日本ならではのプライドといえると思います。

小川フミオ

自動車とカルチャーを融合させた『NAVI』(二玄社)、日本で最も歴史ある自動車誌『モーターマガジン』(モーターマガジン社)、『アリガット』(IMAGICAパブリッシング)の編集長を経て、2004年よりフリーランス。著者に『カルロス・ゴーンへの警鐘』(02年刊、阪急コミュニケーションズ)、『ひとりで行ける上質ごはん』(東京書籍)他、多数。