脳に効くアナログレコード

「ぬくもり」という言葉は、家に似合います。でも使う範囲がかなり広いのは、みなさんもよくご存じのとおりです。たとえば音楽。いい音楽は心にぬくもりを与えてくれます。同時に、どう音楽を聴くかも、家の中でのぬくもりを考えたとき、大事なことと僕は思っています。

僕が好きなのは、レコードプレイヤーで、アナログレコードを聴くことです。針を落としたときにパチパチとスクラッチノイズがスピーカーシステムから聞こえてくると、そのあとの音楽を期待してぞくぞくするほどです。

僕も男子のはしくれとして再生装置に凝った時があり、1930年代のハワイアンやカントリーブルースのSP盤を聴くために、50年代のJBLのフルレンジ・スピーカーを所有していたこともあるくらいです。回転が速いレコード(LP盤の33と1/3回転に対してSP盤では78回転)は、ひとつの音を録音して再生するときに使う溝の長さが長いため、音の情報が多く入るともいわれますが、そういうことを考えるのも楽しい作業です。

いまから音楽を聴こう、という気持ちでスピーカーシステムの前に座り、真剣に耳を傾けるのは大事なことだと思うのです。読書や映画は一所懸命なのに、音楽だけは"ながら"で済ませてしまうのは、もったいないことです。そういうときは、レコードが最高だと僕は思っています。

レコードに含まれている情報量は多く、録音されている音の幅は人間が認識できる範囲を超えているといわれます。人間は不思議なもので、可聴域を超えている音が含まれているからこそ聴いていて心地よいのだ、とも。最近注目されている高解像度(ハイレゾリューション)音源を手がけているオーディオメーカー自身が、「ハイレゾ音源はCDの6倍におよぶデータ量で、はるかに細やかな音の再生が可能。レコード並みか、場合によってはそれ以上」と言うぐらい、そもそも音源としてレコード盤はすぐれているのです。

もし部屋のどこかに空きスペ−スがあったら、このように、ちょっと昔ふうの音楽の聴き方ができる再生装置を置いてみるのも、いいかもしれません。まだ街にはレコードを扱っている店舗があるし、ネットでも購入可能です。料理と一緒で、こだわりが家の生活に、ぬくもりをもたらしてくれるように思います。

小川フミオ

自動車とカルチャーを融合させた『NAVI』(二玄社)、日本で最も歴史ある自動車誌『モーターマガジン』(モーターマガジン社)、『アリガット』(IMAGICAパブリッシング)の編集長を経て、2004年よりフリーランス。著者に『カルロス・ゴーンへの警鐘』(02年刊、阪急コミュニケーションズ)、『ひとりで行ける上質ごはん』(東京書籍)他、多数。