わが家の「住む・読む・育む」術

屋根と相性のいいもの。そのひとつは読書ではないでしょうか。風が気持ちいいと屋外で本を読むのも格別ですが、やはり屋根がないと直射日光はNGだし。寒い季節は、温かい場所での読書もまた大いなる喜び。

本を読むことのすばらしさは、いまさら、ここで触れる必要はないでしょう。1行の詩を書くには世界のすべてを知る必要がある、と語ったのは、プラハ生まれの詩人、ライナー・マリア・リルケだったと思います。本のなかには、著者の叡智や経験が盛り込まれています。それに触れることは、無上の喜びになると、私は思います。

さらに、本には家族を結びつける力があります。とくに子どもが小さいとき、どんな本を与えるか。そのリストを作ることは、親にとって喜びであり、同時に悩みの種でもあります。

たとえば、私が意識したのは、ディズニー好きの子であるがゆえ、動画化されたものは、なるべく原作に触れさせたいということです。映画化されると、毒が薄められ、残酷さはベールをかけられ、たんなる恋物語になってしまいがちです。しかし原作はそういう要素があるがゆえに、読者の感じる力や考える力を育むのではないでしょうか。

本を選んでいるなかで、思わず失笑してしまったことがあります。それぞれ自分が好きだった本ばかり選んでいて、母親と父親とがぶつかったりしたからです。母親は「赤毛のアン」を読ませようとするいっぽうで、父親は「どんぐりと山猫」を持ち出しました。なぜかと訊かれて、私が答えたのは、自分が初めて宮沢賢治の作品に触れたときの衝撃の大きさでした。金色に染められた山のなかと、子どもにとって宝物のようなどんぐりがひしめいている風景と、それに日常では聞かれない不思議な言い回しに満ちた会話......。都会の家の中にいても、想像力が私たちを遠くへ運んでいってくれます。

家の中でできる旅、いえ、家の中でしかできない不思議な旅。それを楽しめるのが、読書なのではないでしょうか。

わが家のReading Assignment

「かいじゅうたちのいるところ」(モーリス・センダック)
非日常との接触の楽しさ

「すてきな三にんぐみ」(トミー・アンゲラー)
奇怪さと温かさの同居

「いやいやえん」(中川李枝子・大村百合子)
子どもの不安を娯楽に転換

「グリム童話」(グリム兄弟編)
ヘンゼルとグレーテルなど

「日本昔話」
かぐやひめ、かちかち山、浦島太郎など

「三びきのやぎのがらがらどん」(マーシャ・ブラウン)
不思議な魅力のトロル

「クリスマスってなあに?」(ジョーン・G・ロビンソン)
美しい物語

「エルマーのぼうけん」(ルース・スタイルス・ガネット)
冒険の楽しさ

「どんぐりと山猫」(宮沢賢治)
自然へのあふれる愛情

「赤毛のアン」(ルーシー・モード・モンゴメリ)
楽しい少女の成長物語

小川フミオ

自動車とカルチャーを融合させた『NAVI』(二玄社)、日本で最も歴史ある自動車誌『モーターマガジン』(モーターマガジン社)、『アリガット』(IMAGICAパブリッシング)の編集長を経て、2004年よりフリーランス。著者に『カルロス・ゴーンへの警鐘』(02年刊、阪急コミュニケーションズ)、『ひとりで行ける上質ごはん』(東京書籍)他、多数。