オンリーワンの存在として認められた
ジャパニーズウイスキーの魅力

住吉「日本人の気質とか日本的感性とかは、日本のウイスキーに関係していますか?」

輿水「ものすごく左右していますよ。手間ひまを惜しまないとか、細部にこだわるとか、『もっとよくするためには』を考えて常に完成度を求めて仕事をする、というのは日本人ならではだと思いますね。マニュアルがあって、それ通りにつくりましょうということではない。『職人』といったほうがいいくらいの仕事ではないかと思います。」

住吉「効率化、機械化などと時代が進んだからこそ、職人気質を守ってウイスキーづくりを続けてきた日本が、世界の中で独自になったんですね」

左から、今年9月に発売された「知多」(3,800円)、
「より日本人の味覚に合ったウイスキーを」という決意から生まれた
「響〈JAPANESE HARMONY〉」(4,000 円)、
ほのかなスモーキーフレーバーが爽やかな「白州(4,200円)」、
やわらかく華やかな香りが楽しめる「山崎(4,200円)」
※全て税別価格

輿水「そうだと思います。スコッチをお手本にして我々はウイスキーづくりを始めましたが、今はオンリーワンの存在です」

住吉「樽はウイスキーにとって大事だと思うんですが、梅酒の樽を使ったものがあるって本当ですか?」

輿水「本当ですよ。スコッチの伝統的な製法で、シェリー酒を寝かせていた樽でウイスキーを熟成させるというものがあるんですが、それを日本的に改良できないかと考えたとき、日本には梅酒があると思ったんです。梅酒を樽熟成させることから始めました。その原酒を最初に使ったのは『響12年』(2009年発売)ですね」

住吉「梅酒の味がするわけではないんですよね?」

輿水「ほのかに香りがしますよ。言われないと気付かないかもしれないけど」

住吉「他には日本ならではってありますか?」

輿水「普通は樽というのは、楢の木でつくるものが多いんですけど、一部、日本人になじみの深い杉やヒノキを入れたらどうなるか試し、実際、製品に使ったこともあります。そういうトライアルはまず日本人しかやらないですね。樽というものに、まだまだ可能性があると思っています」

住吉「でも、ウイスキーは年月がかかるから、そうやって試しに仕込んだ原酒を自分でブレンドしないまま現場を退いたりもするわけですよね。自ら味わえないウイスキーにこだわる原動力は、どこにあるんでしょう?」

輿水「今の原酒だって、10年20年前の先輩の仕事ですから、ウイスキーはそういうものだという感覚が最初からあります。熟成のピークを見極めながら、いかに将来のためにいいものを残しておこうかという気持ちをブレンダーは常に持っています。現役時代の仕事の評価が10年後20年後にされるということはありますからね」

住吉「ノーベル賞みたいですね」

輿水「良いほうにいっているといいですけど、悪いほうになる可能性もある。でもそれは、日本人の感覚の中にある『変な仕事はできない』という部分が支えていると思いますよ」

住吉「輿水さんの仕事を通して感じる日本の文化や感性の本質は、どこにありますか?」

輿水「日本のウイスキーは、突出した個性はないけれど、非常にバランスが良いところが高く評価されます。ウイスキーには複雑さが重要ですが、繊細で複雑、でも全体でみるとバランスがいい。この感覚は日本人が抜きん出ていると思います。逆に日本の大きな個性だと思いますね」

住吉「日本のウイスキーだけでなく、日本の感性そのものが、オンリーワンになってきたといえるのかもしれませんね」

取材をおえて
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